今や、おうちにいながらスマホやパソコンひとつでお買い物ができる時代です。そこで買う側ではなく売る側になる、つまりインターネット上に自分たちの店舗、いわゆる「ECサイト」を展開しようと考えている人や企業も増えていますよね。
今回は、ECサイト運営の基本を徹底解説!ECサイト運営に必要なスキルや資質、ECサイト運営における仕事内容や注意点まで詳しくご説明します。ネットショップ開業を検討中の人は、参考にしてみてくださいね。
ECサイトを運営するってどういうこと?どんな人が向いてる?
まずは、ECサイトを運営するとはどういうことなのか、ECサイトとは?という解説から、どういう人が運営に向いてるのかまで、簡単にご説明していきましょう。
そもそもECサイトとは?
ECサイトのECとは、「electronic commerce(電子商取引)」の略で、インターネット上での物品やサービスの売買を意味します。この電子商取引に対応しているサイトが、ECサイトです。分かりやすくいえば、私たちが日頃「ネットショップ」や「ウェブショップ」などと呼んでいるサイト全般が、ECサイトということになります。
このECサイトを管理し、商品やサービスの提供を行うことがECサイト運営の仕事です。ネットショッピングが当たり前となった今、私たちのまわりには、数多くのECサイトが溢れており、ECサイト運営はこれからも必要不可欠な存在といえます。サイトをうまく運営できれば、将来性のある息の長い仕事になるでしょう。
ECサイト運営に必要な資格は?
それでは、どのような人がECサイト運営に向いているのでしょうか?
まずは資格についてですが、結論からいうと、ECサイトを運営するうえで必要な資格は得にはありません。つまり個人にしても法人にしても、その気になれば誰でもECサイト運営に乗り出せるということです。
ただしひとつだけご注意いただきたいことがあります。ECサイト運営自体に必要資格はなくても、そこで取り扱う商品によっては、資格が必要になる場合があるということです。
例えば、食品を取り扱う場合は「食品衛生責任者」の資格が必要で、あわせて保健所での営業許可も取らなければなりません。その他にも、中古品を販売する場合は「古物商」の許可、お酒の場合は「通信販売酒類小売業免許」といったように、それぞれ必要な資格があるため、売る商品によって資格有無の事前確認は不可欠です。
ECサイト運営で、あると良いスキルは?
のちほど詳しくご説明しますが、ECサイト運営には企画からアフターサービスまで、さまざまな業務が伴います。なかでも必要不可欠なスキルが、商品企画やWEBマーケティング、カスタマーサポートに関するものです。そのため、これらのスキルを持っている人や、こうした業務に携わった経験がある人、未経験でも興味のある人などは、ECサイト運営に向いているといえるでしょう。
なお、ECサイト運営では特に資格は必要ないとお伝えしましたが、持っていると良い資格はいくつかあります。例えば、ネットショップの運営についての知識を持つ資格であれば、「通販エキスパート検定」や「ネットショップ実務士検定」などがおすすめ。また、ネット上でビジネスを展開するうえで、「ネットマーケティング検定」などの資格もあると良いでしょう。
直接的に資格を使用することはなくても、資格取得のために得た知識は、サイト運営を行うなかで役立つかもしれません。また、スタッフを確保するためにバイトなどの求人を出す際も、こうしたスキルや資格をチェック項目に入れると良いでしょう。
ECサイトの業務は大きく2つに分けられる
ここからは、ECサイト運営の具体的な業務についてご説明していきましょう。まずECサイト運営の業務は、「フロント業務」「バックエンド業務」のふたつに大きく分けられます。
フロント業務(マーケティング)
主に、サイトのマーケティングに携わる仕事がフロント業務です。ECサイト運営のフロント業務では、商品企画や仕入れの他、ECサイト自体の制作や運営、商品プロモーションなどを行います。サイトのコンセプト設定やブランディングなども行う、ECサイト運営の顔ともいえる業務です。このフロント業務におけるセンス次第で、ECサイトの集客や売り上げも変わってくると考えて良いでしょう。
バックエンド業務(フルフィルメント)
一方、実際に注文が発生した場合の、受注後の業務全般に携わる仕事がバックエンド業務です。ECサイト運営におけるバックエンド業務はフルフィルメントとも呼ばれ、受注や在庫管理、商品の出荷と配送、そしてサイト利用者へのアフターサービスなどがあります。
バックエンド業務は、お客様と直接的に関わることが多い点が特徴です。フロント業務の内容が集客に深く関わるのに対して、バックエンド業務の内容は、顧客満足度を大きく左右する要素のひとつだと考えていいかもしれませんね。
次からは、ECサイトの立ち上げから商品の発送、お客様のアフターフォローまでの業務について、手順を追って解説していきます。あわせて、どの場面でフロント業務・バックエンド業務が発生するのかもご説明しましょう。
1.商品企画
まずはフロント業務のひとつ、ECサイト運営の醍醐味ともいえる商品企画業務です。自分たちのサイトの商品を顧客が「欲しい」と思ってくれるかどうかは、この商品企画にかかってくるため、非常にやりがいのある業務のひとつだといえます。
商品企画ではまず、市場におけるニーズやトレンド、季節感などをリサーチしたうえで企画を立てることが大切です。その際は「今のニーズや季節感」ではなく、商品を実際にリリースするタイミングを逆算して考える必要があります。また、人の目を引くような印象的なパッケージやコピーライティング、分かりやすい商品説明文なども重要です。こうした商品を売るための要素とともに、商品の原価率や利益率なども考えたうえで、商品企画を行います。
なお、既に実店舗で販売している人も、ネットで同じ売り方が通用するとは限りません。そのため、ネット用の価格設定や商品の見せ方などをしっかりリサーチし、設定することが大切です。
2.ECサイト制作
次に、ECサイト運営の要となるサイト制作を行います。いくら魅力的な商品を並べても、サイト自体が見にくかったり使いにくかったりすると、なかなかサイトの利用者は増えません。そこで、お客様が興味を持ち、かつ利用しやすいECサイトを制作することが重要です。
例えば、商品を探しやすいようにカテゴリー分けしたり、各商品を見やすいように画像や文字のバランスを考えたりといった工夫を心掛けましょう。お客様にとって使いやすいサイトを作り上げることで、商品購入者が増えるだけでなく、その後のリビート率のアップにもつながります。
また、ECサイトは制作したら終わりではなく、その後の更新やメンテナンス業務も非常に大切です。新商品を定期的に追加したり、イベントページを作ったりと、お客様が飽きないよう工夫をしましょう。あわせて、お客様の声も反映させつつ、より利用しやすいサイトになるようメンテナンスを行うことも忘れてはいけない業務です。
3.仕入れ
続いて、ECサイトで販売する商品の仕入れ業務です。なお、取り扱う商品を自ら生産する場合は、原材料の仕入れの他に製品を保管する倉庫の準備も必要になります。
ECサイト運営における仕入れ業務では、商品がどれだけ売れるかの予測を立てたうえで仕入れをし、実際の販売数との間に乖離が生まれないようにしましょう。仕入れ過多だと商品によってはロスが生じ、逆に仕入れが販売数に追いつかないと、販売の機会損失につながるからです。特に、一時的に人気が上がった商品などの場合、せっかく注文があっても仕入れが追いつかないばかりか、やっと入荷したと思った頃には人気が落ちているケースもあります。
商品不足による販売機会の損失を回避するためには、仕入れ先を1カ所だけに絞らず、複数の仕入れ先を確保しておくことがおすすめ。あわせて、その商品に興味がある人には入荷を知らせるメールを送るようにするなど、万が一品切れしてしまっても、お客様を逃さない工夫が大切です。
4.プロモーション
せっかく素敵な商品と見やすいECサイトを用意しても、誰にも見てもらえないと意味がありませんよね。そこで非常に重要になってくる業務が、サイトのプロモーションです。
ECサイト運営のプロモーションはインターネット上がメインで、主にWeb広告、SNSマーケティング、SEO対策、コンテンツマーケティングの4つに分けられます。
まずWeb広告としては、検索サイトの結果ページに表示されるリスティング広告や、さまざまなWebサイト上に表示されるディスプレイ広告などが挙げられるでしょう。その商品に興味がある人の目につきやすいため、より短期間で購買行動につながりやすい点が魅力です。
SNSマーケティングでは、InstagramやTwitter、FacebookといったSNS上で、インフィード広告などを利用して商品PRを行います。SNSマーケティングは、おしゃれで目を引く画像を使うなどの工夫により、地道に利用者増加を目指せる手段です。
SEO対策とコンテンツマーケティングは、いずれもECサイト自体を活用したプロモーション手段。一朝一夕に集客が見込めるものではありませんが、しっかり続けることで確実な集客につながるでしょう。
まずSEO対策では、検索エンジンで上位に出るようにすること(=SEO対策)を追求し、サイト自体がより多くの人に見られることを目指します。
一方コンテンツマーケティングは、ECサイト内にブログやコラムなどのページを作り、そこにコンテンツを追加することで集客につなげる方法です。なお、コンテンツマーケティングは、SEO対策とあわせて進めるパターンが一般的だといえるでしょう。
こうしたプロモーションの仕方については専門知識が必要なため、本やインターネットでの情報収集に限界を感じる場合などは、専門家に相談してみることをおすすめします。
5.受注
ここからは、バックエンド業務です。フロント業務がうまくいき、商品を気に入ってくれるお客様がいれば、注文が入ります。
受注とひと言にいっても、ただ注文を受けるだけではありません。注文が入ったことを確認したら、まずお客様に対して注文確認のメールを送信する必要があります。サイズやカラーの注文間違いを防ぐ意味でも、確認メールは不可欠です。なお、確認メールの送信は手作業でも構いませんが、迅速な対応や効率化を求めるなら、メールの自動送信システムの利用もおすすめ。
また、注文を受けたら在庫の確保も行います。この作業は人の手で行うしかないため、二重チェック体制にするなど、ミスがないようマニュアルを徹底することが大切です。
6.在庫管理
せっかく商品の注文が入ったのに、いざ探してみたら在庫がない…万が一このような状況に陥ってしまうと、販売機会だけでなく、お客様からの信頼も失いかねません。そのため、在庫管理も非常に重要な業務のひとつです。
在庫管理では、ただ商品在庫があるかだけでなく、在庫の量が最適か、今どこに保管されているのかなども把握する必要があります。加えて、サイト上に在庫数をきちんと反映させ、購入可能な設定にしておくことも重要です。
特に、ECサイトだけでなく実店舗でも同じ商品を販売している場合は、注文の重複により在庫が足りなくなることなどのないよう、これらの管理を徹底させる必要があります。
7.出荷
受注した商品が無事確保できたら、出荷業務に入ります。まずはピッキングといって、商品を保管場所から取り出し、それから梱包作業です。輸送中の商品の破損などを避けるため、緩衝材などを用いた丁寧な梱包を心掛けましょう。
梱包の状態は、商品を購入した人に与える印象を大きく左右します。梱包が丁寧ならプラスのイメージを与え、リピーターになってもらえる場合もあるでしょう。逆に梱包が雑だと、クレームにはならなかったとしても、二度目の利用はないかもしれません。購入してくれたお客様への心遣いとして、出荷の段階でメッセージカードやサンプル品などを添えるのも良いでしょう。
8.配送
梱包して出荷準備が整った商品は、いよいよ配送です。実はECサイト運営では、配送に関わる業務もいろいろとあることをご存知でしょうか?
まずは配送伝票を作成し、商品を配送業者に託します。発送した段階で、購入者へ発送通知メールを送信。その後、商品の到着確認や配送完了メールの送信も行います。もちろん、その間に購入者から配送に関する問い合わせがあれば、そちらにも対応しなければなりません。
なお、在庫管理や出荷・配送などの業務については、ECサイト向けの代行サービスを行っている会社もあります。注文が多く出荷や配送作業が業務を圧迫する場合などは、こうした物流代行サービスを利用することも検討してみてください。
9.アフターサービス
商品は、一度売ったら終わりではありません。販売後のアフターサービスの内容が、その後、固定客になってもらえるかどうかに関わる場合もあります。
まず基本的なアフターサービスとしては、お客様のもとに商品が届いた後の状態確認や、使用していて何か困ったことがないかといったフォローメールを送りましょう。そこでお客様から質問や意見などがあれば、更なるサービス改善のヒントにもなります。
もちろんこうした一般的なアフターサービスだけではなく、ときにはクレームが発生するケースもあるでしょう。そこでいかに誠実に対応するかどうかが、サイトのイメージや評判を左右する場合もあります。
クレームの内容も、「商品に欠陥があった」「注文したものと違う」「納期になっても商品が届かない」などさまざま。クレーム内容によって対応方法も異なるため、どのようなケースでも速やかに最善の対応が取れるよう、基準となるマニュアルを用意しておくことも場合によっては必要です。
ここまでが、ECサイト運営の主な仕事内容になります。
「意外と大変!」と思いましたか?それとも、「これならできそう!」と思われたでしょうか。現実的に、ショップによってはこれらの業務をすべて1人でやっているというケースもあるため、1人でやろうと考えている人は、本当にこれらが1人でできるか?ということはよく考える必要があるでしょう。もしバイトで人を雇うとなれば、人件費も発生するので、作業内容や経費など、トータルで見てよく考えてみてくださいね。
ECサイト運営で気をつけるべき点や大切なポイントは?
続いて、ECサイトを運営する前に是非覚えておきたい注意点や、大切なポイントについてもご説明しておきます。
ECサイト構築の方法について
ECサイトを制作する前にまず知っておきたい点が、サイト構築の選択肢についてです。ECサイトを構築する場合の選択肢には、大きく分けて次の3つがあります。
既存のモールに出店する方法
まずは、モール型のショッピングサイトに一店舗として出店する方法です。有名なものとしては、「Amazon(アマゾン)」や「楽天市場」などが挙げられます。
機能やデザインに関しての自由度はあまり追求できませんが、手軽に自分の店を持てることが大きな特徴といえるでしょう。また、はじめからある程度の集客が見込めたり、モールのイベントやセールに便乗できたり、モールの広告を利用できたりといった点も大きなメリットです。
オリジナルで一からサイトを構築する方法
独自ドメインを持ち、自分たちだけに特化した本格的なECサイトを作りたい場合などは、一からサイトを構築するという選択肢があります。一からといっても、ECサイトの構築に必要な機能がパッケージ化された、「ECパッケージ」というソフトウェアを利用するケースも少なくありません。
ECパッケージには有名なものとして、「ecbeing(イーシービーイング)」や「EC-Orange(イーシーオレンジ)」などがあります。サイトが完成するまでに時間と手間はかかりますが、より自由度の高いサイトを作り上げることが可能です。
ASPカートを利用してサイトを構築する方法
モール出店ではなく、独自ドメインを持ったオリジナルのECサイトを手軽に作りたい!そのような場合は、「ASPカート」と呼ばれるサービスを使うのもおすすめです。有名なものとしては「shopify(ショッピファイ)」などが挙げられます。
ASPカートでは、ECサイトを構築するうえで必要となる機能が予め用意されており、提供されたクラウド上で手軽にECサイトを構築することができます。デザインや機能についてもオリジナリティを出しやすいため、ブランディング戦略なども行いやすい点が特徴です。
ECサイトを構築する際は、まずこれらの方法の特徴を把握したうえで、自分たちの目的や理想に合ったものを選ぶことが大切です。
ECサイト運営にかかる費用について
前述のサイト構築の方法の話とも関係しますが、ECサイトを開発する際は、費用についても注意が必要です。
まずモール出店の場合は、出店料だけなので費用はそこまで高額ではありません。高くても10万円程度でECサイトを始めることができます。
一方、ECサイトをオリジナルで一から開発するとなると、費用は100万円以上かかると考えましょう。特に、より高度なオリジナルのシステムを追求する場合は、500万円以上と高額になるケースもあります。
「オリジナルサイトは作りたいが、そこまでの初期投資はできない」という場合に適している方法が、ASPカートの利用です。ASPカートのなかにはshopifyのように、月額約3,200円から利用できるリーズナブルなものもあります。月額費用だけで初期投資がいらないため、より手軽に、本格的なECサイト運営に挑戦できる点が魅力です。
集客コストについて
ECサイト運営では、それなりの集客コストが必要になります。「プロモーション」の項目でもご説明した通り、自分たちのサイトを見てもらうには、インターネット上で広告を打ったり、SEOなどの対策を講じたりしなければなりません。当然そこには広告料や、プロに依頼する場合の費用などが発生します。
ECサイトの認知度を上げて安定した集客につなげるためにも、まずは目標となる訪問者数・売上額などを決めたうえで、それに応じた集客コストを投じることが大切です。
ECサイトが陥りがちな運営上の注意点について
ECサイトを運営していくうえでもうひとつ注意すべきが、他店との価格競争についてです。ECサイトでは店舗間の価格比較が容易なうえ、直接の接客が難しいこともあり、お客様が最終的に安い店に流れてしまうケースは少なくありません。そのため、価格競争に発展しやすいのです。
しかし、ただ値下げをして客数を増やしても、当然利益率自体は下がります。このような価格競争に陥ってしまうと、本当にやりたいことができず辛いと感じたり、店舗の経営自体に影響を与えたりすることもあるでしょう。こうした価格競争を避けるためには、サイトのブランディングやサービス内容の充実などに力を入れることが、より重要になります。
ECサイト運営に向けて一歩前進!
サイトを作って運営する、というと難しそうなイメージですが、今はECサイトが手軽に作れるサービスも出ています。あとは店舗運営のノウハウさえ掴めば、ECサイト運営は決して難しいものではありません。
サイトの構築やブランディング、集客についてなど、自分たちだけで進めるのは不安があるという場合は、専門家に相談してみるのもおすすめです。夢のECサイト運営に向けて、是非、一歩を踏み出してみましょう。