ネットショップを開業したいと考えている人にとって、気になることが開業資金ではないでしょうか。副業でネットショップの運営を検討している人など、特にネットショップ未経験であれば、できるだけコストを抑えたうえで運営したいと考えることが普通でしょう。
では、ネットショップを開業するには、いったいどのくらいの資金が必要となるのでしょうか。今回は、ネットショップを開業するなら押さえておきたい基本知識として、開業資金や手続き、準備すべきものをまとめてご紹介します。ネットショップの運営を検討している人は是非参考にしてみてください!
ネットショップは0円で開業できるってホント?
近年、無料で利用できるネットショップ構築システムが増えたことにより、開業へのハードルが低くなってきました。「ハンドメイド品がよく売れるようになったから、自分のネットショップを開業した」、「実店舗の売上が下がったから、無料で始められるネットショップを始めた」…というのは、最近よく聞く話です。
しかし、ネットショップの運営には、仕入れのための費用やシステム構築システム以外にもあらゆる費用が必要となることをご存じですか?
例えば、ネットショップを管理するためのパソコンや商品を撮影するためのデジカメ、そして商品が売れた際に発送するための梱包材などの費用です。加えて、ネットショップの開業には営業許可が必要であるため、その申請費用も忘れてはいけません。
ネットショップを始めるにあたり、必ず考えなくてはならないことが開業資金と運転資金です。パソコンなどの機材購入費や営業許可申請費用などが開業資金、人件費や広告宣伝費、有料の固定費が必要となるサービスを利用する場合は、その固定費などが運転資金にあたります。
もし資金が足りないようであれば、なにかしらの方法で調達する必要があるでしょう。
ネットショップを開業するために必要なもの
ここからは、ネットショップを開業するにあたり準備しなければならない機材や資材、手続きについて確認していきましょう。
パソコン
ネットショップを運営するには、パソコンがあると便利です。スマホだけで運営できるサービスもありますが、商品画像の編集ソフトや会計ソフトなどを使用することを考えると、パソコンを購入することをおすすめします。
また、顧客情報を扱うことになるため、セキュリティソフトのインストールも必須です。パソコンのスペックにもよりますが、10万円程度のものであれば、ネットショップ運営において十分でしょう。
プリンタ
プリンタは納品書などを印刷するために必要です。FAX機能も備えたものであれば、お客様との連絡手段の幅が広がるでしょう。プリンタ本体は2万円程度で購入が可能で、加えて紙やインクなどの消耗品費も必要です。
デジタルカメラ
同じ商品であっても、商品の写真写りによって受ける印象は大きく異なります。見栄えの良い写真を掲載することで売上アップにつながるでしょう。
プロのカメラマンに依頼できればベストですが、カメラ初心者であれば10万円程度の一眼レフを使用することがおすすめです。加えて、三脚やレフ版、照明などもあればより良い写真が撮れるでしょう。
各種ソフト
商品写真やバナーなど、ネットショップに掲載する画像を編集するためにはソフトが必要です。画像編集の定番ソフトといえばAdobeのIllustratorやPhotoshopなどがあり、月額2,800円程度で利用できます。さらに安価に抑えたいのであれば、パソコンに標準装備されている編集ソフトを使用しましょう。
また、ネットショップを開業するとなると決算書の作成も必要です。日々の帳簿入力なども含め、会計処理の効率アップを図るためにも会計ソフトの導入をおすすめします。価格は無料〜3万円程度です。
梱包素材
段ボールやガムテープ、緩衝材など商品を発送する際に使用するものが梱包素材です。もしアパレル商品を扱うのであれば、水濡れやキズがつかないようにOPP袋に商品を入れるとお客様から好評でしょう。
他にも、段ボールに店名やデザインを入れるとなれば別途料金が発生しますし、お礼状などを入れる場合は印刷代や用紙代も必要です。
ネットの通信費
ネットショップを運営するには、安定した通信回線が欠かせません。インターネット環境がない場合は新規で契約する必要があります。費用はサービスや契約期間によって異なるため、いくつかのプランを比較して選ぶと良いでしょう。
営業許可申請も忘れずに
扱う商品の種類によっては、販売許可を得る必要があります。例えば、食品であれば食品衛生法に基づく営業許可、中古品であれば古物商許可証です。
食品衛生法に基づく営業許可は業種によって申請費が異なり、菓子製造業であれば16,800円です。該当する食品の料金を調べて、販売開始までに必ず許可を取っておきましょう。一方、古物商許可証の申請は19,000円となります。こちらも販売までに許可を取っておきましょう。
ネットショップのシステム構築は無料でできる!
ネットショップをオープンさせるには、数多くあるネットショップ構築システムから、自分にお店にぴったりのものを選ぶ必要があります。この構築システムにはいくつかの種類があり、なかには無料で利用できるシステムもあります。
主なネットショップ構築システムの種類と費用は次のとおりです。
初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|
モール型 | 初期費用/0円〜5万円 | 月額費用/0円〜5万円 |
オープンソース型 | 初期費用/0円〜50万円 | 月額費用/0円〜50万円 |
ASP型 | 初期費用/0円〜5万円 | 月額費用/0円〜5万円 |
モール型とは、Yahoo!ショッピングや楽天市場に代表されるもので、実店舗に例えるなら大型ショピングセンター内にスペースを借りて出店する形です。
モール型の最大のメリットは集客力の高さでしょう。既にモール自体を利用する人が多いことから、自分で集客しなくてもある程度の集客が見込めることや、セールやキャンペーンなどのイベントに便乗できることから、人気の高いモールに出店すれば多くの人に訪れてもらえる可能性があります。また、商品検索機能もあるため、消費者が目当てとする商品を探しやすいでしょう。
オープンソース型とは、EC-CUBE(イーシーキューブ)に代表される、インターネット上で公開している構築システムです。拡張機能が豊富であるため、カスタマイズの自由度が高いといったメリットがあります。
ASP(Application Service Provider)は、Shopify(ショッピファイ)やBASE(ベイス)に代表されるクラウドでネットショップを構築する方法です。運営に必要な機能やテンプレートが用意されているため、気軽にショップをオープンできます。
当然のことながら、無料で利用できるサービスと有料サービスでは機能に差があります。
最低限の機能があればOKという場合は無料サービスを、凝ったデザインにカスタマイズしたい場合や、自社のデータを紐付けしたい場合などは拡張の幅が広い有料のサービスを利用するなど、どんなネットショップにしたいかに合わせて使い分けるようにしましょう。
加えて、販売商品がどのサービスに適しているか、どのようなデザインであれば訪問者の購買意欲を高めることができるかなどについて、専門家の意見を聞くことは有効です。
では、無料サービスと有料サービスにはどのような違いがあるのでしょうか。
それぞれに代表されるサービスの特徴を見ていきましょう。
無料のサービス
無料サービスといえば、モール型はYahoo!ショッピング、オープンソース型はEC-CUBE、ASP型はBASEやSTORES(ストアーズ)などが有名です。
それぞれの得意分野や、その他にかかる費用に注目して選ぶとよいでしょう。
Yahoo!ショッピングは、初期費用、月額システム利用料、売上ロイヤリティが無料であることが特徴。利用者も出店数も多いことから、集客力に優れています。
EC-CUBEは、ダウンロード版とクラウド版が用意されており、ダウンロード版が無料で利用できます。店舗運営者向けのコミュニティが充実しており、何か問題が起きてもすぐに質問できる体制であるため、初心者でも問題解決しやすいでしょう。
BASEは初期費用と月額費用が無料であり、ショップデザインも好みのテンプレートを選んで商品を登録するだけという、だれでも簡単に使える点が人気を集めています。
STORESは、無料プランと有料プランがありますが、それぞれの違いは決済手数料の違いであり、そのほかの機能はほぼBASEと同じです。使いやすさを重視するのであれば無料プランを、しっかり運営していきたい場合は有料プランを選ぶと良いでしょう。
有料のサービス
無料サービスの基本的な機能だけでは足りないという場合は、有料サービスを検討しましょう。ただし、機能が増えれば使いこなすことが難しいというデメリットもあります。初期費用や月額費用のほか、使い勝手にも注目して選ぶとよいでしょう。
有料のサービスの中でも、気軽にネットショップを始めたい人におすすめしたいのが、ASP型であるShopifyです。初期費用はいらず、必要なのは月々の費用だけ。一番安くて月額29ドル(日本円で3000円程度)でネットショップが開設できます。
Shopifyは、カナダ発、世界175カ国以上で利用されているサービスで、世界各国の言語はもちろん、税率や決済方法に対応していることから越境ECにチャレンジしやすいことが特徴です。幅広い国で利用されているため、世界中の人にあなたの店を見てもらえる可能性があるのも、他のサービスにはない魅力でしょう。
テンプレートも豊富に用意されており、配送や在庫管理にも強い点もメリットです。
有料タイプは無料タイプと違い、できることの幅が広がります。ネットショップ開設は、安ければ良いというわけではなく、あなたがお店でやりたいことがしっかり叶うところを探すことが大切です。
集客をするために有料広告を使用する場合も
ネットショップは実店舗と違い、通りすがりの人に商品が売れるということはほぼありません。特に、モール型でないショップはその傾向が顕著です。
そのため、ネットで検索したときにヒットしやすくしたり(SEO対策)、お店に人がアクセスしてもらえるような集客をしたり、といったことがとても重要になってきます。
集客対策には、無料でできるものと有料でできるものがあります。無料でできる対策は、実際の集客や売上に繋がるまで時間がかかるため、ショップ開設からすぐに集客したいというのであれば、有料の対策をすることもあるでしょう。そうなると、その分の費用も念頭に置かなければいけません。
しかし、こういった集客のサポートをしてくれるところもあります。例えばShopifyであれば、検索エンジンの最適化により潜在顧客がストアを見つけやすい仕組みになっています。
他にもクーポンを発行したり、Facebook(フェイスブック)と連動してShopifyに移動することなく商品を購入したりすることも可能。また、Pinterest(ピンタレスト)やInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)などと連携して宣伝を行うなんてことも。
ネットショップを開業するときには、集客を自分するのか、モールやネットショップ構築サービスの手を借りるのか、そのあたりも考えながら最適なところを見つけていきたいですね。
ネットショップの開設で助成金は申請できる?
ここまでで、ネットショップの開業や運営には、ある程度の資金が必要だとわかっていただけたと思います。詳しく知ると、資金が足りない…と思った人もいるのではないでしょうか。
でも大丈夫!ネットショップの運用資金を調達する方法のひとつに、助成金を活用する方法があります。
ITツールを使用して運営するネットショップは、「IT導入補助金」の対象となる可能性があります。開業にあたっての費用の1/2、最大450万円の補助を受けることが可能です。
また、IT導入補助金のほかに、自治体によっては経費の一部補助などを行っている場合があります。是非、居住エリアの情報をチェックしてみましょう。
ネットショップ開業に必要な資金を把握しよう
ネットショップの開業には、ある程度まとまった資金が必要であることがわかりました。無料の構築システムもありますが、パソコンなどの機材費や梱包材などの資材費はもちろんのこと、売上アップに繋げるために広告費が必要となる場合もあるでしょう。
ネットショップの質や運営効率を高めるためには、それなりの投資が欠かせないことは事実です。とはいえ資金調達には助成金を活用したり運営効率を高める機能を持つサービスを選んだりすることで、資金をできるだけ抑えて開業・運営することができます。
最低限必要となる資金はもちろん、どこに資金を投入するかをしっかり考えたうえでネットショップを開業しましょう。